2025.03.12
公道を走るAGV――法規制の現状と未来への展望(コラム)
近年、AGV(無人搬送車)やデリバリーロボットが公道を走る未来が話題になっています。メディアでは「無人化が進む!」といったセンセーショナルな見出しが躍りますが、実際には厳格な道交法のもとで遠隔監視が義務付けられるなど、多くの規制のハードルがあります。
先日、県警察本部と公道におけるAGV走行の可能性について協議しました。その内容を整理しながら、日本の規制の現状と、これからどのように省力化・自動化を進めるべきかについて考えてみます。
公道でのAGV走行の現状
現在、日本の道交法において、公道でAGVを走行させるためにはさまざまな条件をクリアする必要があります。主なポイントは以下のとおりです。
① 車両区分と規制
- 0.6kW未満のモータを搭載する車両 → ミニカー(50cc相当)と見なされ、原付バイク並みの規制を受ける
- 0.6kW以上のモータを搭載する車両 → 「自動車」として扱われる
- 遠隔操作型小型車(デリバリーロボット)→ 特別な行政許認可と標識が必要
② 必要な手続き
- ナンバー登録
- 自賠責保険への加入
- 自動車税の納付
- 保安基準(灯火類・ミラー・ブレーキなど)の適合
また、遠隔操作型小型車に関しては、無人での完全自律走行は禁止されており、遠隔監視と操作が必須です。現在の技術では「無人化」と言っても、実際には一人のオペレーターが常時監視し、複数の車両を管理しなければならないのが現実です。
これからの課題と解決策
公道でのAGV運用が実用化されるためには、現在の厳格な法規制を緩和するだけでなく、技術的な解決策も求められます。
① 許認可の取得と制度改革
現状の道交法では、AGVが公道を走るための許可取得には多くの時間と費用がかかります。特に、
- 陸運局の特別許可
- 安全基準の適合証明
- 走行ルートの事前申請
などが求められるため、これを簡素化する制度の見直しが必要です。
② 走行環境の整備
AGVが安全に走行できるようにするためには、
- 専用レーンの設置
- ゲート管理によるアクセス制限
- 自動停止機能の義務化
などの対策が求められます。特に、工場や物流センター周辺では、特定の区画をAGV専用エリアにすることで安全性と実用性を両立できるでしょう。
③ 遠隔監視・操作の省力化
現在、遠隔監視が義務付けられているため、人手不足の問題が課題となります。これを解決するためには、
- AIによる自動監視システムの導入
- 一人のオペレーターが複数のAGVを同時管理できる仕組みの構築
- 一定の条件下での「監視レス運用」の許可取得
などが重要になります。
警察庁のホームページに「自動運転の公道実証実験」に関する情報が掲載されています。
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/roadtesting/index.html
明るい未来へ向けて
現在の法律のもとでは、公道を走るAGVの完全無人運行は困難ですが、技術の進歩と制度の改革によって、より省力化された運用が可能になる日は近いと考えています。
私たちは、AGVを単なる自動運搬機としてではなく、「人の負担を減らし、より創造的な仕事に集中できる環境を作るツール」として活用したいと考えています。法律の制約をクリアしながら、省力化・自動化を実現する道を模索し、未来の物流・生産現場の変革に貢献していきます。
これからも、AGVの可能性を広げるために、技術開発と社会との対話を続けていきます。皆様とともに、より良い未来を創っていきましょう。